アルコール依存症とはどんな病気?alcoholism

どんな病気? アルコール依存症とは

アルコール依存症は、職業や性別、年齢に関わらず、飲酒を続けていれば誰でもなりうる病気です。
アルコール依存症は進行性・慢性の病気です。

飲み続けていると心身に悪影響を及ぼすだけでなく、家族や友人関係、社会的な信頼を失っていく病気です。また、一度依存症になってしまうと、同じようにお酒を調整して飲むことが困難になります。一人で止めようと思っても、止められなくなってしまいます。

アルコール依存症による飲み方の変化の例

アルコール依存症になると、飲み方にも明らかな変化が生じます。
次のようなことが起きていたら、要注意です。

  • 気持ちよく酔えていた感覚が減り、替わりに飲酒量が増える
  • 二日酔いが増え、昼間から飲むようになる
  • 家族から隠れて飲むようになる
  • お酒の好みが無くなり、アルコール飲料であれば、えり好みせず飲酒するようになる

特徴 こんな症状・兆候はありませんか?

ご本人から
「二日酔いが苦しくてまた飲んでしまう」
「自分で止めたくても止められない」
「酒無しでは眠れない」
ご家族から見て
「好きで飲んでいるようだけど、この頃お酒で体調を崩すようになってきた」
「お酒を止めてと言っても、言うことを聞いてくれない」
「お酒を飲むと人が変わってしまう。どうしたらいいか分からない」

「アルコール依存症自己診断法(CAGE)」

次のチェックリストは、アルコール依存症の問題があるかを簡便に調べるものです。

  • 飲酒量を減らさなければいけないと感じた事がありますか?
  • 他人から飲酒を非難されて気にさわったことがありますか?
  • 自分の飲酒について悪いとか申し訳ないと感じた事がありますか?
  • 神経を落ち着かせたり、二日酔いを治すために、「迎え酒」をしたことがありますか?

上記の質問のうち2項目以上が当てはまった場合、アルコール依存症の可能性が疑われます。
お気軽にご相談下さい。

Ewing,J.A. (1984). Detecting Alcoholism JAMA252: 1905-1907

様々な問題 お酒によって困ること

こころの問題
飲んでいない時でもイライラしやすくなったり、ちょっとしたことで落ち込みやすくなります。また、うつ病を合併しやすくなり、こころの健康上のリスクを高めます。
体の問題
体にとって大事な器官である、肝臓に悪影響を及ぼすだけでなく、心疾患や脳卒中のリスクを高めます。疲れやすくなり、突然の手足のしびれが生じた場合は、危険なサインです。それ以外にも、食道や胃腸、すい臓、十二指腸などあらゆる臓器の病気を引き起こす基になります。
家族の問題
大切な家族やきょうだい、親せきの人々を巻き込んでしまいます。お酒を飲みたいがために嘘を繰り返すことや、自分の問題を肩代わりしてしまうことによって、身近な人々からの信頼を失ってしまいます。場合によっては、家庭内暴力(DV)の問題が生じることもあり、家族に多大な影響を与えてしまいます。
社会関係の問題
二日酔いや酒臭が原因で、仕事を欠勤してしまうことや、業務上のミスが増え、徐々に仕事をするうえでの信頼関係を失っていきます。

離脱症状と否認

離脱症状

毎日飲酒を続けたのちに、偶然飲酒をしない日があった際、いつもと違う症状が起きたことはありませんか。お酒を連続して飲み続け、体にアルコールが長期間残っていた状態から、飲酒を一時的に止めることで様々な症状が出現します。こうなると、気分が非常に不安定になるだけでなく、発汗や手の震えが止まらず、場合によっては幻覚が起きてしまうこともあります。これらの症状を、離脱症状と呼びます。お酒を一杯でもひっかけると、離脱症状は収まることがあります。このため、アルコールをなかなかやめられないという、悪循環が生じてしまいます。

否認

依存症の進行が真っ只中にいる人は、飲酒のことを指摘されても、「自分はまだ上手に飲める」、「お酒の量を減らせば大丈夫」、「止めようと思えば簡単に止められる」と思いがちです。また、自分の問題がお酒にあることを分かっていても、中々素直に認めることができず、反発したり、あるいは指摘した人を逆に非難したりします。問題を認められないことによって、何度も同じ事態が繰り返されることになります。離脱症状の悪循環以外にも、お酒の厄介さは、このようなアルコール依存症特有の心理的な機制によるところが大きいのです。

治療と回復 アルコール依存から回復するには

依存症が進行してしまうと、「お酒をコントロールして飲む(=ほどよく飲酒を止めておける)」、という当たり前のことが非常に困難になります。そして、現在の治療では依存症の方を以前のような「コントロールして飲む状態」に戻すことは、残念ながらできません。しかし、お酒を飲まないでいられる生き方を学ぶこと、ご自身が学んだ内容を実践していくことは、可能です。そしてこのことこそが、アルコール依存症の回復には必要なのです。

アルコールを断ち始めて生じる離脱症状には、急性期の専門治療が必要です。この段階で、治療によって安全に離脱症状を通り超える必要があります。

退院後は、お酒を断った生活(断酒した生活)を続けて行くことが避けて通れません。飲酒のリスクがあるため通院の継続や、定期的に開催される地域のミーティング(自助グループ)、アディクションの治療をカバーしているデイケアへ、継続して通うことが望まれます。独りでは続け難いお酒を断った生活でも、通院や自助グループへの参加、デイケア通所の継続など、社会資源の活用によって依存症の回復や社会復帰を可能にすることができます。もう一度気分よく飲めるようになることはありませんが、飲まないで過ごすよりよい生き方が回復になります。

当院では急性期の治療から、外来の通院、デイケアまで広くカバーしており、様々な依存症の病態に対応しています。

「白倉・樋口・和田(編)(2003). アルコール・薬物関連障害の診断・治療ガイドライン じほう」より一部改変